哲代さんのお宅はいつも姪御さんや近所の人たちで賑わっています/(c)「104歳、哲代さんのひとり暮らし」製作委員会

哲代さんが繰り返し話してくれるエピソードの一つに、小学校時代に徒競走の選手に選ばれた話があります。運動会で拍手喝采を浴びたというエピソードは、鉄板中の鉄板。何十回も聞かせてもらいましたが、落語のように少しずつ洗練されていくのです。(笑)

しかし、103歳の時に足の病気で入院。普段泣き言を言わない哲代さんがひどくつらそうな表情だったので、とても心配しました。歩けなくなったらひとり暮らしを続けられない。そんな思いがあったからか、リハビリに大変力を入れておられました。

自慢の足が思うように動かなくなったことにさぞがっかりしているだろう。そう胸を痛めましたが、哲代さんは「100年よううた体じゃけえな」と言って、大事そうに足を慈しみます。

無事に退院し、しばらく姪御さんのおうちで過ごした後は再び自宅へ。さすがにすべて自炊だった以前と同じようには暮らせず、食事は宅食サービスを利用しながら姪御さんたちにも頼ることに。

日課だった草むしりも難しくなりましたが、それでも哲代さんは、「昔ほど(草が)憎らしいとは思いませんね」と言うのです。それどころか「ちょっとでも隙間があったら芽出しますから。強いもんですねえ草は」と、草にも敬意を払い、感心さえしてみせます。

できなくなったことを求めすぎない哲代さん。上手な老い方を見せてもらいました。

後編につづく

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