前向きな言葉と素敵な笑顔が人気を博し、102歳の時に出した本がベストセラーになった石井哲代さんは、4月に105歳を迎えます。そんな哲代さんのひとり暮らしの様子を追った映画が公開。4年にわたり取材した監督の山本和宏さんが哲代さんの魅力を語ります(構成:玉居子泰子 撮影:本社・武田裕介)
長く生きていれば想定外の幸せが
哲代さんが102歳の年、施設に入居している妹の桃代さんのお見舞いについて行かせていただいた時のこと。
末っ子の桃代さんは哲代さんが7歳の時に生まれ、子守りを任されていたこともあって、哲代さんの愛情もひとしお。脳梗塞を患い、言葉が出ない桃代さんに、「ももちゃん、ももちゃん、お姉さんよ」と声をかけ、触れようと手を伸ばしていました。
コロナ禍で、アクリル板越しにしか話せなかった悔しさはいかばかりだったでしょう。それでも、「背中におぶって、ももちゃんとばっかり遊んだんじゃけぇなぁ」という哲代さんの言葉に、桃代さんは涙を流していました。
帰り道、桃代さんのひ孫に車椅子を押してもらいながら見せた、哲代さんの嬉しそうな笑顔は忘れられません。
お世話をする姪御さんたちを見ていると、決して「親戚だから」とか「やってあげている」という様子がありません。みんな哲代さんに会いたくて、心から力になりたいと思っているのが伝わります。