哲代さん104歳のお誕生日/(c)「104歳、哲代さんのひとり暮らし」製作委員会

お子さんに恵まれなかった哲代さんは、「本家の嫁」として苦しさを感じていたそうです。しかし、こうして周囲の人に慕われるのは、哲代さんのお人柄だと思わされます。

小学校教師だった哲代さんが初めて担任を受け持った生徒さんたちの同窓会に招待され、80年ぶりに再会した時の哲代さんの喜びようも印象的でした。

太平洋戦争の真っ只中に尋常高等小学校の教師を務めた哲代さん。子どもを食べさせるのに精一杯だった時代で、哲代さんは親代わりとして世話をし、お漏らしした子の下着を洗ってあげることもあったそうです。

米寿となった生徒たちは、大変な時代に自分たちを守ってくれた哲代先生のことを忘れていませんでした。そして哲代さんもまた、生徒の顔と名前をちゃんと覚えているのだからすごいことです。

哲代さんがカメラ越しに見せる表情のひとつひとつが、「長く生きていれば想定外の幸せが訪れることがある」ということを教えてくれました。

あるシンクタンクの調査によると、「100歳まで生きたい」という人は、日本人の2割しかいないそう。それを哲代さんに伝えると、「世の中変わったんですねぇ」と一言。「でも、花を摘めるし、お話もできるし、生きているからこそできることってあるんですよ」。

私自身、あと60年生きたいか正直わからないなと思っていました。でも、哲代さんが言うと「そうだよなあ」と、素直に思えるから不思議です。