石井哲代さんを4年にわたり取材した監督の山本和宏さん(撮影:本社・武田裕介)

画面の自分にツッコミを入れて

哲代さんが周囲の人に愛される理由は、いつも感謝を忘れず、人を大切にしているところにあると思います。

たくさんの教え子がいて、近所でも「先生、先生」と呼ばれるのに決して偉ぶらない。逆に周囲の人たちに、見守ってくれてありがとうと口癖のように言葉にします。どんな些細なことでも、助けてもらうことを当たり前だと思っていないのです。

53歳の時に哲代さんがご近所・中野地区の仲間を集めて開いた「仲よしクラブ」は、結成50年以上。週1回続けていて、現在、参加者の平均年齢は80歳を超えています。

ご自身が主宰者のような場所でも、みんなと同じ立場で音楽やお喋りを楽しむのが哲代さんの素晴らしいところ。本当に分け隔てがないんです。

教師時代に磨いたオルガンの腕をふるって、大正琴で奏でるのは、ご自身が作曲した「中野ソング」。仲よしクラブでもみんなで一緒に歌うこの曲を、映画のエンドロールに使わせていただきました。