来店までに苦情客の情報収集

来店までの猶予は「40分」。それだけあれば、この苦情客の正体は店内でつかめるだろうと思い、さっそく部下に情報の収集を指示しました。

同時に、傘売り場の係長への確認もしました。その係長は私のかつての部下で、「持って来い」などとは、言わないはずだと信じられる社員でした。やはり彼女も「そんなことは言いませんよ」と否定しました。

実際のご案内は、「こちらにご来店の予定はございますか、そのときにご持参いただいても結構です。お急ぎならこちらから出向きますが、代替品をお選びになるのなら、お越しいただければ、他の柄もご覧になれます」とのこと。関根さんにむかし受けた指導です、と微笑みながらも、「電話でも怖そうな方でした」とつけ加えました。苦情客は係長の言葉の揚げ足をとっているだけのようです。

その会話の後、古い馴染みの販売員たちにこの人物に心当たりがないか聞いて回ったところ、ポロショップにて「そんな感じのうるさい人なら、このショップの客にもいるよ」と情報が得られました。

さらに「先日ショップの傘を見て、ここでも傘を売っていたのか、と残念がっていたよ」と。この一言で、狙いは商品交換だと察しました。と同時に、グダグダ言う割には、分かりやすい客だと思いました。

30分を過ぎたところで、席に戻って待っていると電話が入り、「今着いた」と、言うなり切られました。どこまで舐めているのかと思いましたが、想像した場所へ向かうと、やはり来賓用の駐車場に車を止めています。その日は来賓がなかったので、それを許可して、自己紹介をしました。180センチを超えた大男でした。