2戦目、試供品
このKさんが数か月して再来店し、店内から携帯に連絡が入りました。2階の化粧品売り場にいるのだが来てくれないか、という呼び出しです。
彼は、エスカレーターの脇に立っていました。売り場ではある化粧品ブランドのキャンペーン中で、新製品の試供品を配っていました。彼が言うには、受け取るのは制服姿の社員が多く、一般客はほとんど来てももらっていかない。ここで見ているとよく分かる、と言うのです。
この頃には私も相手の性格はしっかりつかんでいます。自分も欲しいのなら素直に言えばよい、と思いながら、「もらってきましょうか」と、意地悪く聞きました。Kさんは素直という字を知らないのか、タイミングを逃してしまったのか、「いいよ」とやせ我慢しています。
そこで、「社員と言いますが、制服を着ているお客様ということもあります。また、紹介用に、ユーザーの知人に届ける可能性もあります」と伝えると、不快な顔をして去っていかれました。
ただ、これはご意見としては大変有効なもので、その日の午後、課長と係長を呼び現場でそのことを伝え、社員が客なら、早出、遅出の私服時間帯に試供品をもらいに行くよう指示を出しました。お客様の苦情というものは、時にこのように役立ち、店舗のイメージの改善につながります。「お客様は神様である」とは、こういったことを言うのかもしれませんね。