新薬は1種類の成分でできているので……

ただし、新薬は1種類の成分でできているので、どうしても体への働きかけが単調になります。オプジーボにしても、特定の免疫細胞をターゲットにした薬なので、そのターゲットの働きを高めるうえでは優れていますが、体の根本から「治す力」を引き出すところまではなかなかいきません。実際にオプジーボのがんの奏効率は2割前後で、がんの種類や患者さんによって効果に差があることが知られています。

漢方薬の場合は、微量の多成分が一斉に体内に入り、免疫のシステムや炎症のシステムなど、全身のあらゆるシステムを一気に引き上げ、体全体の「治す力」を底上げする方向に働きます。漢方薬によって引き上げられる重要なシステムの一つが、腸管免疫です。

漢方薬の働きにより、免疫細胞の7割が集結している腸の働きが活性化すれば、オプジーボのようながん免疫療法の効果を底上げすることができると考えられます。両者を併用することで、鬼に金棒の効果が期待できるわけです。

※本稿は、『漢方で腸から体を整える』(青春出版社)の一部を再編集したものです。


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