一見きちんと整理されている2DKの部屋。リサイクル業者に売れるモノもありそうだと、確認してみることにした。壁際に置いてある棚や押し入れ、クローゼットを開けると、出るわ出るわ、「なんでこんなに取っておいたの?」というものばかり。

押し入れには、編みかけのセーター、毛糸、ビーズなどの手芸品と、100冊を超える手芸本。クローゼットの奥には段ボールがあり、見たこともない着物が約60枚入っていた。

別の場所には母のアルバムが何冊も。めくると写真一枚一枚に、丁寧に説明書きがつけられている。これは一体、どうしたらいいのだろう。

全部捨てる、と潔くなれたなら遺品整理は簡単なのに、いちいち中を確かめてはノスタルジーに浸り、取っておきたくなってしまう。母の生前に、いるモノ、いらないモノを一緒に分けておけばよかった……。そうしたら懐かしい話もできたのにと、センチメンタルな気分にもなり片づけが進まない。

リサイクル業者に来てもらい、着物や洋服、レコードプレーヤーの見積もりを取った。着物は60枚で1000円。古いけれど、きれいにたとう紙に包まれているのに……と少し残念な気持ちに。アクセサリーも数十個で1000円。洋服100点で1000円。プレーヤーは値段がつかずじまい。

仕方ないとあきらめ、すべて売ったものの後悔が襲ってきた。特に着物は柄が可愛かったから、リメイクして小物を作ったら素敵だっただろうし、外国人の友だちにあげたら喜んだかもしれない。考え直して、着物のみ返品して欲しいと連絡をした。

返してもらったはいいものの、これらを保管しておくスペースはわが家にはない。悩んだ末、レンタル倉庫を契約。月1万円は痛い出費だが、捨てる覚悟がないのだから仕方がない。0.8畳分のスペースを借り、置いておくことにした。

最後に残ったのは、ビニール袋、パンタロン、扇風機、ハンカチ……など、処分するしかないモノ。私の職場でゴミ回収を依頼している会社に連絡をしてみたら、遺品整理もしてくれるという。大型の家具もゴミも全部込みで、金額は最初に見積もりをお願いした業者の4分の1。すぐに予約をした。