(イラスト:ナカミサコ)
総務省が発表した住宅・土地統計調査(令和5年)によると、全国の空き家の数は900万戸。空き家率も13.8%と過去最高を記録しています。離れて暮らす親の死去により、空き家となる家も多いのでしょう。その際、遺品整理は残された人の大きな負担となっています。
ただ、故人の残したモノと向き合うと、知らなかった一面が見えてくるようで――。東山恵子さん(仮名・神奈川県・会社員・67歳)は、団地でひとり暮らしをしていた母親を亡くし、生前のままになっていた団地の部屋を訪れると……。
ただ、故人の残したモノと向き合うと、知らなかった一面が見えてくるようで――。東山恵子さん(仮名・神奈川県・会社員・67歳)は、団地でひとり暮らしをしていた母親を亡くし、生前のままになっていた団地の部屋を訪れると……。
手芸本100冊に着物が60枚
私の母は89歳の時、骨折を機にケアハウスへの入居を決めた。団地で元気にひとり暮らしをしていたが、足腰が弱って転ぶことが増えたので、これ以上はムリと判断したのだ。一人娘としてはプロに任せることができて一安心。母が新しい暮らしに馴染むまで、借りていた部屋はそのままにしておくことにした。
半年が過ぎた頃のある台風の朝、ケアハウスから、「お母さんが返事をしないんです。少し熱っぽいので救急車で病院に行きます」と電話があった。仕事を早退し、母の保険証を持って駆けつけると、確かに息はしているけれど、こちらの呼びかけに反応がない。
入院手続きを、と言われベッドを離れている間に、母は息を引き取ってしまった。長患いせず、ピンピンコロリで幸せな最期だと思うものの、あっという間の出来事に茫然としてしまう。
慌ただしく葬儀やケアハウスの退去手続きなどを終えたところで待っていたのは、賃貸だった団地の明け渡しだ。まずは母の生前のままになっている荷物を何とかしなければいけない。ポストに入っている「遺品整理! 格安!」と書かれたチラシを集めてみたものの、どれもいまいち決め手に欠ける。
そこで友人に相談し、紹介してもらった遺品整理業者から見積もりを取ることにした。やって来た業者は部屋の中を確認し、「このモノの量ですと、費用は120万円です。ただ、ご紹介なので割引ありで、100万円で承ります。トラック5台分ですね」と言うではないか! 想像を超える金額に仰天し、「無理、無理、そんな大金ないってば」と叫びそうになりながら、紹介者の手前、見積もり書だけ受け取って帰ってもらった。