ただ、今にして思えば、脳梗塞で倒れた頃の私は、心と体が一致していなかったのかもしれません。仕事が大好きなはずなのに、自分がどこに向かって頑張っているのかわからなくなっていたのです。
「疲れてるのかな」と内心気づいていたのに、気合で乗り越えるのが美徳だと信じきっていたので、病院で検査をしてみようとか、ゆっくり休もうという発想にはなれなくて。病院のベッドの上で「体の声を無視していたから、こういう方法で知らせてきたのか」と思ったりもしました。
サードオピニオンで治療法をみつけた
その後、私の脳梗塞の原因は内頸(ないけい)動脈解離といって、首の右側にある、脳とつながる太い血管の50パーセントが狭くなっていた、ということが判明しました。内頸動脈の内側の壁が剥がれ、剥がれた部分に血液が溜まり、その血液が凝固し血栓となって脳に飛んでいったのだろう、と医師から説明を受けたのです。
では内頸動脈の内側の壁が剥がれた原因は何なのかというと、先天的に血管が弱いのか、外的な力によって傷ついたのかわからないとのことでした。原因がわからなければ防ぎようがありません。
退院が決まった時点でも私の内頸動脈はまだ50パーセントが狭くなったままでした。そこで「どうしたものでしょうか」と医師に尋ねたところ、「つきあっていくしかない」と。でもそれは、体に爆弾を抱えて生きていくことを意味します。当然、不安がなくなるわけもなく、独自に治療法を探ることにしました。
退院後は神戸の実家でしばらく療養生活を送っていたのですが、この期間は、司会者やアナウンサーが出ている番組は見られませんでした。当たり前のことですが、私がいなくても会社も社会も回っていく、ということを突きつけられる気がして。落ち込んだりもしましたが、まずは安心して生きたくて、インターネットで情報を集めたり、知り合いに聞いたり。
最終的には「ステント治療」という治療法と出会ったのです。ステント治療というのは、ステントと呼ばれる金属でできた網目状の筒を動脈の狭くなった部分に装着して血管を広げ、人工的に血流を正常に保つというもの。
再発が不安でしたが、自信を持って「もう大丈夫だ」と思えるようになったのは、このステントを入れたことがすごく大きかったですね。今もステントは私のお守りであり、支えになっています。