なかでも一番大切にしているのは、「いつもと違う」という感覚です。たとえばフルーツを食べて、普段より苦いと感じたら、疲れているのかもしれないと思って気をつけるといった具合に。今回の経験で、病気になりかけのときにいかに早く対処できるかが大切だと学びました。自分の体の違和感や異変を見逃さない、自分をしっかり把握できる生活を心がけています。

体と心は連動しているので、心を喜ばせることも重要課題。2年前、局アナからフリーランスへと転身したのも、人生を充実させるための活動の一環でした。15年間お世話になった会社には感謝しかありません。ただ、これからは時間にゆとりを持ち、自分の経験を活かせる仕事を模索して生きていきたいと思っています。

脳卒中に関する情報を発信したり、病気の方やご家族が笑顔になれたり、少しでも元気になるような番組に関わりながら、仕事を続けていくのが一つの夢です。

パラリンピックの取材にも力を注ぎたいと思っています。医師から「たまたま後遺症が残らなかった」と言われて以来、パラアスリートに興味を抱くようになりました。選手を取材していると、「優しい差別」という言葉を耳にします。気を使いすぎることが、かえって当事者の本音を封じてしまったり、心を通わせる妨げになってしまうのだと。

私も、8ヵ月の療養生活を終えて仕事に戻ったときに、職場の人たちから「大丈夫?」と声をかけてもらい、とても感謝しつつも、病気の話ばかりでどこか寂しいなと感じることもあって。「知らず知らずのうちに引かれてしまう線のようなものを超えていきたい。脳梗塞を経験したからこそ、新たな伝え方ができる」と思っています。