撮影:藤澤靖子

 

「がんになって、人生の答え合わせが始まった気がします。健康なときにどう生きていたかが、病後の人生に反映されるわけです。(略)僕たちは、がんという病気に試されているのかもしれないなあ」

写真家・幡野広志さんは、2017年末、34歳の若さで血液がんの一種である多発性骨髄腫を発症し、余命3年の宣告を受けた。妻と幼い息子のことを思い、命と家族について深く考えるようになった幡野さん。発売中の『婦人公論』7月23日号の特集「『チーム家族』で支えるがん」では、がん告知後の家族について語った。

現在、幡野さんは、家族や友人などの人間関係を極限まで減らしている。その整理する中には「母」との関係も含まれていた。

「患者が望む最期と、家族が望む最期は違います。いくら妻が僕の気持ちを尊重してくれても、親や親戚が『奇跡を信じて、やれることはなんでもやってもらおう』と言ってきたら、妻の決心は揺らぐかもしれない。僕が死んだあと、妻が変な後悔を背負わずにすむよう、死に際にはよほど信頼できる人以外病院に呼ぶまいと思っています。だからそれまでに、僕自身の手で人間関係を整理することが必要だと痛感しました」

昨年末には見舞いにきたいという母の申し出も断ったという。「本来なら親が子どもの意思を静かに受け止めてくれるのがベストですが、結局、何か言わないと気がすまない。親子って本当に難しいです」と心境を吐露する幡野さん。

『婦人公論』2019年7月23日号

SNSやブログなどでがん患者の率直な思いを発信するうちに、生きづらさを抱える人たちから悩みを明かされることが増えた。「生きづらさを抱える人の悩みは、がん患者の悩みと根底で繋がっているのではないか」、そんな好奇心で30人以上に直接話を聞き、その経験をもとに、著書『僕たちが選べなかったことを、選びなおすために。』を執筆したという。

「僕は今、親族や友人との関係を整理しながら、残りの人生のあり方を自分で選んでいます。本来なら親との関係を絶つなんて、しないに越したことはないですよ。でも、人生は選ぶことができるし、選べないと思っている家族だって、選びなおすことができる。その自由と権利をみんな持っているんだということを、できるだけ多くの人に伝えたかった」

幡野さんは、自分が選んだ家族とともに濃く、穏やかな時間を過ごしている。

そのほか、がんの告知後の人間関係の変化などについても、本誌では語っている。