残りの人生のあり方を自分で選ぶために

実はブログでがんを公表したあと、それまで誰にも言えなかった悩みを吐露するメッセージが、たくさん届くようになりました。送ってくるのは一言で言えば、生きづらさを抱えている人たち。先の短い末期がんの僕に対して、「この人なら私の悩みをわかってくれる」「話を聞いてくれる」と感じたのでしょう。

僕ががん患者として感じている思いは、ほかの人にも当てはまるのか。生きづらさを抱える人の悩みは、がん患者の悩みと根底でがっているのではないか。そんな好奇心で30人以上に直接話を聞きました。17歳で子宮と卵巣を全摘した人。中学生のときに母親を乳がんで亡くした人。25歳で自殺したいと思っている人……。いろいろな人に会いましたが、やはり家族との関係で苦しんでいる人ばかりだったのです。

取材をもとに、『僕たちが選べなかったことを、選びなおすために。』という本を出版しました。僕は今、親族や友人との関係を整理しながら、残りの人生のあり方を自分で選んでいます。

本来なら親との関係を絶つなんて、しないに越したことはないですよ。でも、人生は選ぶことができるし、選べないと思っている家族だって、選びなおすことができる。その自由と権利をみんな持っているんだということを、できるだけ多くの人に伝えたかったのです。