「入院中、どうしてこんなことになってしまったのだろうと幾度も考えました」(撮影:藤澤靖子)
テレビ東京のアナウンサーとして、公私ともに充実した生活を送っていた大橋未歩さん。34歳という若さの彼女にとって、脳梗塞はまさに青天の霹靂でした(構成=丸山あかね 撮影=藤澤靖子)

前触れもなく冬の夜、突然に

脳梗塞に見舞われたのは2013年1月上旬のことでした。家でデスクワークをして普通に過ごしていた私が、体の異変に気づいたのは23時頃だったと思います。洗顔中に右手が左手に触れたのですが、左手の感覚がなくて、「あれっ?」と。幾度触れてもマネキンに触っているよう。不思議だなぁと思いながらも、特に気に留めることなく洗顔を終えたのですが……。

左手で取ったはずのクリームの容器を落としてしまい、床に散乱したクリームを拭おうとかがんだ瞬間、ガクンとその場に倒れました。起き上がろうとしても、まったく体に力が入らなくて。そこからの記憶は断片的です。

家族が洗面所に駆けつけて私の顔を見たときには、顔の左側が垂れ下がっていたそうです。これは危ない状態だと察して、救急車を呼んでくれました。私は「大丈夫」と伝えようとしたのですが、「らいじょうぶ」となってしまい、「保険証」と言いたくても「ほけんひょう」になってしまう。ろれつが回っていないことから「今、自分に重大なことが起きている」とおぼろげな意識の中で思いました。

いつの間にか救急車に乗せられていて、「この症状は脳だと思うので、MRIかCTがとれる病院へ急ぎます」と言う救急救命士さんの声を聞きながら、「喋れなくなったら失業するのかな」「もしかしたら死んじゃうのかな」と、どこか不安になったことも覚えています。

倒れてから15分ほど経過した頃、すーっと意識がクリアになると同時に体が自由に動かせるようになり、病院に着いたときには自力で歩けるようになっていました。安堵したものの、MRIを受けた結果、脳の4ヵ所で脳梗塞が起きていることが判明して。血管を詰まりにくくするための点滴を受けながら、10日間の入院生活を送りました。

入院中、どうしてこんなことになってしまったのだろうと幾度も考えました。親戚に脳卒中を経験した人は一人もいないし、私は34歳と若く、病気知らずで、血圧やコレステロールの数値が高いと指摘されたこともなかったのに。