“シティポップ”それは自己肯定感が上がるサウンド
カリフォルニアの大学を卒業して日本に帰る頃には、歌と自分が乖離することがなくなりました。それからは歌を歌うこと、曲を作ることが本当に楽しくなった。CMタイアップ曲などの依頼を受けると、あっという間にぽっとアイデアが出てきます。心の内側を歌う曲を作るのも、すごく好きですし、ご要望があれば、オーダーにお答えして、曲を作るという作業も、心から楽しめるようになりました。
今はシティポップ(1970年代〜80年代に流行した山下達郎や大貫妙子といったアーティストによる都会的なサウンド)がブームですね。かつては“ニューミュージック”と言われていた音楽が今は“シティポップ”と呼ばれてアメリカから逆輸入され、若い人にも浸透しているようです。私が1980年にリリースしたシングル「DOWN TOWN」も今や“シティポップ”にジャンル分けされていますが、私自身もシティポップの大ファン。私にとってシティポップはいまだにブームですし、キラキラしていたあの頃の懐かしい音楽を聞くと、すごく自己肯定感が高まる気がします。実際に、若い頃聴いていた曲を聴くと、オキシトシンと言われる幸福物質が脳内で分泌されるからなんだとか。
現在のシティポップブームがアメリカの若者から始まったのは、当時のニューミュージックが洋楽の影響を色濃く受けていたからなのでしょう。だから、彼ら(海外の人)にとってもどこか馴染みのある音楽なのだと思います。
そして“シティポップ”が今でも色褪せない理由としては、1970年〜80年当時のアレンジャーさん(編曲者)たちの力によるところが大きいように思います。時代背景もあって、音楽はとても贅沢に丁寧に作られていました。当時のアレンジャーさんたちは、間奏、コード、ギターのカッティングに至るまで、精密に設計図を書いていた。それを一流のミュージシャンがスタジオで正確に再現する。今から音楽をやろうという人にとっても教科書的というか、コピーすることでその通りの音が出ると、とても満足感の高いサウンドになっているのだと思います。