
(画=一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬3匹(クレイマー、チトー、ニコ)、猫3匹(メイ、テイラー、エリック)と暮らす日常を綴ります。今回は「親友が死んだ」(画=一ノ関圭)
枝元なほみ、通称ねこちゃん。
間質性肺炎と診断されて、足かけ五年になる。ここ二年ほどは酸素吸入器を装着するようになり、そのままテレビで料理したり講演に行ったり、この姿を人に見せるのも自分のミッションだと言っていた。そしてここ数ヵ月は、入退院をくり返すようになった。それでも本人は復活するつもりだった。
あたしは毎日ねこちゃんにLINEした。食べ物の話をし、病状の話をした。あたしは外を歩き回って写真を撮って送った。空や雲、木や花や星や月。その返信がなかなか来なくなった。しばらくしてぽつんと「調子悪いんだけど心配しないで」と言ってきた。「心配してるよ」とあたしは答えた。
ねこちゃんにいちばん近い家族として寄り添って世話をしていたのが、義妹のさっちゃん。あたしは親友、準家族として、さっちゃんと連絡を取り合っていたのである。