――現在も、大学入学を機に移り住んだ鹿児島で制作を続けていることに、理由はありますか。
特に海外の人からは、日本のアーティストは東京にいると思われているんですよね(笑)。どこにいても作品を作り発表することができるのは、いい時代になったなと思います。
東京に行きたいという欲は、昔も今もあまりありません。人や物が多い都会にいるとあれこれきっと忙しくなって、創作時間が削られてしまいそうだなと感じます。今はお誘いをいただいても、「鹿児島なので遠いんですよね」と円満にお断りできますし。この環境だからこそ、時間を確保し、自分のペースで進められています。
出張は多いですが、家にいるのが一番好きですね。一人の時間もいいですし、子どもたちとゲームしている時間も幸せです。
旅などの特別な経験が感性を豊かにする、という一面はありますが、人生の8割くらいは家と仕事場での普通の暮らしじゃないですか。それをいかに良くするか、というのを大事にしたほうがいいと思っています。
睡眠時間が人生の3割を占めるのだから、寝具はいいものにしよう、という考えと一緒。特別な経験を探すのではなく、普通の生活に目を配って、目の前のものを面白くするためにどうしたらいいかなって考えたいですね。
無理してどこかに行かなくても、今あるものを使って楽しめたら、それこそ見立ての効用。生活の豊かさって、そんなところに転がっているのかもしれません。