真剣な眼差しでフキの下ごしらえをする、すみかの入居者たち(撮影:寺澤太郎)

曲を間違えても気にしない

江森さんはつねに、仕事用とプライベート用のスマートフォンを肌身離さず持ち歩いている。現在も週5日は峠茶屋の事務所に出勤し、訪問看護師として利用者の健康管理にも対応するためだ。プライベートでは、松本市内に住むシングルマザーの長女一家をサポートしている。

「娘は乳がんの既往があるうえ、職場まで片道1時間かかる。だから3人の子どもの面倒をみるのは大変。真ん中の子は自閉症を抱えているので、朝は私が娘の家に行って孫の学校の支度をさせ、スクールバスに乗せるまでを担当しています。

その養護学校が素敵でね。孫もいろんなことができるようになったし、学校の子どもたちの笑顔を見るのも私の癒やしなの!」

そんなふうに人生の山あり谷ありを明るく語ってくれる江森さんだが、「実は今、人生で一番落ち込んでる。八方ふさがり。初めてよ、こんなピンチ」と声を落とすのだ。

視線の先には、夫の元春さん。企業で長く総務や経理を務め、「どんぶり勘定でおおざっぱ」という江森さんの介護事業を、ずっと後方支援してくれていた。それが数年前から目と耳の衰えを感じ、運転免許証を返納。