
部屋の壁のハンカチは、息子さんがフレームに入れて掛けて帰ったもの…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは東京都の60代の方からのお便り。介護の仕事で訪れたAさんの部屋には、花園のように花柄のハンカチがたくさん飾られていて――。
入居者の女性は花が好きだった
老人介護保健施設で介護の仕事をしている。ある日、Aさんという78歳の女性の部屋に入って目をみはった。美しい花の絵がたくさん飾られているのだ。
近づいてよく見ると、絵ではなくフレームに飾られた花柄のハンカチ。まるで花園のような部屋になっていた。
Aさんのひとり息子は近所でこぢんまりした町中華の店を経営している。彼が美大生の時、店主だった父が他界。息子さんは絵の道を諦め、A子さんと二人三脚で店を切り盛りしてきた。
母の日とAさんの誕生日にはハンカチをプレゼントし、ささやかな外出を楽しんだという。
花が好きなAさんは店の入り口に色とりどりの植木鉢を置いていた。だから、息子さんの選ぶハンカチはいつも花柄だったのだ。