豪ちゃんへの思い

蘭子が思いを寄せるのが、朝田家に奉公に来ている石工の豪ちゃんです。

蘭子は幼い時から豪ちゃんが大好きで、それが気づけば恋心になったと解釈しています。豪ちゃんは庭で石をコツコツ削って、蘭子は郵便局に働きに行く。同じ家で過ごすなかで「豪ちゃんとは分かり合えるんじゃないか、同じ側の人間なんじゃないか」と蘭子は感じるようになったのだと思います。

(『あんぱん』/(c)NHK)

――印象に残っているのが、出征する豪の壮行会のシーンだという。朝田家に町の人が集まり、のぶたち三姉妹がよさこい節を披露して盛り上げた。宴の途中で家を抜け出した豪を追いかけた蘭子。2人は向き合ってお互いの気持ちを伝えあう。まずはのぶが駆けつけ、蘭子を励ます。豪と蘭子が結婚の約束をしたところに、母・羽多子(江口のりこさん)も追いつき、蘭子に着替えの入った風呂敷を渡し、2人で最後の時間を過ごすよう送りだした。しかし、豪は戦死してしまう。

豪役の細田さんとの共演は3回目で、役やシーンひとつひとつにまっすぐに取り組んでくれる信頼がありました。どういうふうに心を通わせ合おうか、テストの段階からお互い探っていたの気がして、演じていてすごく背筋が伸びる、いい時間でした。

壮行会では、私がよさこい節を歌って、豪ちゃんはそれをじっと聞いています。言葉は交わせないけれど目線を合わせて、私がにこっと笑ったら豪ちゃんも笑ってくれたのをすごく覚えています。その後のシーンの、豪と蘭子の会話はぐっとくるセリフがたくさんあったので、2人の言葉のキャッチボールをちゃんとできればいいシーンになると思いました。蘭子がなかなか思いを打ち明けられないでいたら、のぶと羽多子さんが背中を押してくれる。豪ちゃんと2人ではなく、4人のシーンにしなければならなかったので、蘭子の受け止め方とアクションについてなど細かいシーンの組み立て方は監督と話し合いました。

蘭子はこのとき10代ですが、豪ちゃんの死は蘭子の考え方に影響を与える大きなできごとです。蘭子は豪ちゃんを失ったことを背負いながら生きていく。今後にとっても、思いが通じる場面は大事なシーンになると思ったので自然と力が入りました