アンパンマンへの思い

――今作は、嵩とのぶがさまざまな困難を乗り越えてアンパンマンを生み出してくまでの道のりが描かれる。脚本にはやなせさんの詩の一節などから引用されたせりふもあり、やなせさんの人生哲学が詰まっている。

私も子どものころ、アンパンマンのおもちゃや絵本で遊びました。蘭子を演じていて、人間味があるロールパンナが好きになりました。正義と悪の心を合わせ持っているキャラクターがおもしろいし、孤高の存在でかっこいいです。

(撮影:米田育広さん)

『あんぱん』は、やなせ夫妻の人生をなぞるだけではなくて、作品全体にやなせさんの考え方やアンパンマンの要素が散りばめられています。

台本を読んでいて、はっとする1行やすごくいいなと思うセリフは、やなせさんの言葉から取っているものも多くあります。やはり、幼少期の体験や戦争を経たからこそ、やなせさんの人生哲学が生まれたのだなと感じました。

現代の私から、「逆転しない正義とは飢えた人にパンをあげることだ」という考えが、こんなに実感を伴って出てくることは絶対にありません。やなせさんが身をもって体感したことからアンパンマンが生まれているし、嘘がない。『あんぱん』もその哲学にヒントを得て、戦時中に限らずいろいろな場面で命をまっすぐに描いていると感じています。