患者さんがなにを求めて来ているのか
私が最終的に産婦人科医でやっていけると感じた理由は、外来に来られる患者さんであるおばちゃんたちのお話を聞くのが全然苦じゃなかった、むしろ好きだったということです。
産婦人科医の仕事は病棟業務や分娩、手術などさまざまあり、外来はその中の一部分にすぎません。でもその外来の場で、人生の先輩である女性の患者さんたちがいろんな悩みや思いを打ち明けてくれるわけです。
その話はたいていこんがらがっていて、原因と結果がごちゃまぜになって悩んでおられる。絡み合ってしまったお話をどうほぐしたらご本人が納得できるだろうか、年の若い私からできる提案はなんだろうかとくり返し考えた記憶があります。
もちろん、産婦人科医としてホルモン補充療法や漢方による治療なども提案できるわけですが、「患者さんはなにを求めて来ているのか」をはっきり認識する、これが私が大切にしてきたいちばんのポイントです。
当時から、「この方は私にこのお話をすることで、その先はなにを望んでいるのだろうか」ということをいつも考えていました。確かに、ご本人にもその答えが見えていないことがありました。
でもその中で、いくつかの選択肢を考え、「もしかしたらこれかな、いや違うな、こちらかな」と試行錯誤する。その方自身の生活もしくはご家庭の状況に直接手は出せないけれど、その方自身の答えの方向に近づくことができる、これが私にとってうれしいことでした。