16歳と70歳のコンビで

花は高校に入学したものの学校になじめず、今はずっと休んでいます。学校を辞めたいと言っても、親はなかなか許してくれない。

一方のゆりは、「どこかで働こうかしら」と言っても、周囲から「もう70でしょ」といなされてしまう。ただその時、花だけは賛同してくれます。ゆりはそれが嬉しかったんですよね。

16歳も70歳も、それぞれ周囲から年齢で決めつけられやすい気がします。好きなことをしようとしても、16歳は「もうちょっと我慢しなさい」と言われがちで、70歳は「もう年なんだからやめたら」と言われがち。

でも、年齢で行動を規定されるのは違うのではないか、という思いがありました。そういうところで、花とゆりは共感しあえるコンビなんです。

ですから、これは二人の居場所探しの話であるかもしれません。ただ、大きな冒険をするわけでなく、ちょっと気分が晴れたらいいな、くらいの気持ちで一緒に散歩している。

昔から自分の書く小説は、「何も起こらない話じゃないか」と言われてきました。でも最近は、「何も起こらないことが心地いい」という感想をいただきます。

時代の変化なのか、こうした物語に癒やしを感じる読者が多くなっているのかなと感じます。