八木がいなければ
<軍隊に入隊した嵩を導いてきたのが、妻夫木聡さん演じる八木信之介だ。嵩の戦友として幹部候補生試験のサポートをしたり、嵩が作った紙芝居が審査に合格するよう口添えしたりした>
嵩にとっての八木は、戦争パートにおけるのぶに近い存在だったかもしれません。のぶが走っている道はずっと輝いていて、嵩はその背中を追っていました。八木は手法も照らし方も違うけれど、軍隊の厳しい状況下で光のある方向を教えてくれた。「あっちに行け」「こっちに行け」と伝えてくれた。八木がいなかったら嵩は死んでいたと思います。
妻夫木さんとは、僕が小学校4年のときに出演した映画『ブタがいた教室』で共演しました。妻夫木さんが先生役で、僕が生徒役。「命」を題材にした映画でした。妻夫木さんが、役柄を超えてお話をしてくださったこともたくさんあって、今、自分が生きていく上で糧になっています。
戦争中の撮影では、妻夫木さんとは、あまりお話できなかったんです。戦争が、そういう精神性に出演者全員をさせてしまった。戦争パート後に、ようやく妻夫木さんとたくさんお話できるようになりました。子供のころのイメージとは違って、お話もできて楽しそうに生きていて、チャーミングでほっとします。『あんぱん』で妻夫木さんと出会うことに運命を感じました。戦争パートで妻夫木さんが横にいてくれたことはすごくありがたかったです。