『あんぱん』北村匠海が語るのぶとの再会「ここで一歩前に立たないとのぶは一生嵩を好きにならない　次郎を意識して背中を見せた」

今田美桜との化学反応で

＜北村さんは第１回の冒頭で５０代の嵩を演じた。放送前の取材会ではそのシーンについて撮影時期が早かったことを明かし、「どう道筋を作ってそこに至るか想像の中で演じるしかなかった」と話していた＞

第１回で、５０代のやなせさんを演じたことは博打でした。先々のことがわからなかったので、実在のやなせさんをトレースして先にゴールを作ってしまった。１回目では笑い方を真似しています。演じる上で大切にしているのは、嵩の「目」です。今は４０代の嵩を演じていますが、だんだん目を座らせるような芝居をしています。声のトーンや姿勢も変えていて、少しずつ哀愁が漂うように演じてきました。

新しい台本が中園さんから届くたびに、「改めてどう演じるか」を考えてきました。今の嵩を見ていただくとわかると思うんですが、柳井嵩って「やなせたかし」ではない。生き方も違うし、本当にこんな「たっすい」（土佐言葉で弱々しい）人物だったのかと思うところはあります。ドラマが進むにつれて、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩だと強く思うようになりました。

やなせさんから生まれた言葉や作品はたくさんあります。『あんぱん』では伯父の寛先生の言葉になっていることが多い。柳井嵩という人物をいかに自分のものにしていくのかは僕自身もまだ読めていません。ただ、自分が描いた道筋ではおもしろくないし、現場では今田さんとの芝居で化学反応が常に起きている。その連続で、自分が思ってもいないような未来になればいいと思っています。