とにかく本を、読んでいた
――亡くなった父は新聞記者で、一種の文学青年だったので、うちには本がやたら多くて。啄木(歌人の石川啄木)の歌集だとか、ロシア文学の本なんかはほとんど全部揃っていました。
医者をやっていたおじも本をよく読む人で、その頃の雑誌はほとんど取っていました。『中央公論』『改造』『文藝春秋』『オール讀物』、それから女性のために『婦人倶楽部』や『主婦之友』『婦人公論』とかも。大人の本が家中にやたらにあって、それを子どもの時から読んでいたので、僕は変なふうになっちゃってね、どうも具合が悪かったですねえ。
その小さい頃の体験がベースにあって、漫画家の仕事にもつながっている要素的なことはいくらかあると思います。でもまさか、自分が描くほうへまわろうとは考えもしなかったけど。
小さい時から、やっぱり漫画も上手だったんですか?
─―まあまあ、というところだな。それほどずば抜けて上手だったわけでもない。漫画家に憧れる人たちのなかには、当時、自分で描いて投稿したり、というようなことをやっていた人たちが、ずいぶんいたようです。
僕も、中学生ぐらいになると投稿し始めて。その頃になると受験雑誌を取るでしょ。僕も毎月取ってもらって、学科のところはほとんど読まず、漫画の投稿ばかりして、メダルとかいろいろなのをたくさんもらっていた。