系図の価値

まあ、冗談はさておきまして、本編にて田沼意知のもとに佐野政言が「系図」を持ち込んだ場面を覚えている視聴者の方は多いのではないでしょうか? 

本郷先生のロングセラー!『「失敗」の日本史』(中公新書ラクレ)

ドラマ内では、まったく関心を持たない父・意次によって庭の池に放り投げられてしまったわけですが…。

戦国時代は武士の社会。そこでは「実力」がモノを言う。豊臣秀吉が良い例で、どこの馬の骨か分からなくても、大手柄を立てた人が出世するわけです。

ところが合戦のない時代になると、武家社会でも、格式とか儀式の価値が高まる。世襲が社会の大原則となり、「筋目の正しさ」が求められるようになります。

となると、世襲の根拠たる「系図」は、きわめて有効な武器になる。だからこそ政言は、意知に「系図を自由に書き換えてよい」と進言したわけです。