危機感を抱いた鳴海
和夫がふと漏らした光子への言葉が鳴海の胸をえぐった。
「結婚もせず、子どもも生まないで、1人でずっと好き勝手してきたから、最後にバチがあたったってとこか」
光子に対する冒涜と思ったからではない。光子と自分の境遇が同じだったためである。鳴海にとっての3種の神器は「自由な生活」「自由な金」「ネコ」だった。
このままでは自分も孤独死するかもしれない。危機感を抱いた鳴海は慌てて婚活を始める。無料の婚活アプリに登録した――。
孤独死を扱ったドラマは過去にもフジテレビ『限界団地』(2018年)などいくつかあった。高齢住民が多い集合住宅が舞台だった。高齢女性が孤独死を避けたくて、刑務所入りを目指すNHK『一橋桐子の犯罪日記』(2022年)もつくられた。だが、若い世代と孤独死を結び付けたドラマは初めてである。
もっとも、全国に1人暮らしの人は約2300万人いる。2024年に孤独死した人は7万6020人。うち死後8日以上過ぎてから発見された人は2万1856人いた(警察庁調べ)。孤独死は遠い世界の話ではない。若い世代が孤独死を考えるドラマの出現は時代の必然だろう。
このドラマは死の描き方も現実的で新しい。これまでの大半のドラマは死体がきれいで、遺族のほとんどが泣いた。しかし、このドラマは死体の一部が汁状になってしまい、和夫はちっとも悲しまない。雅子に至っては光子と不仲だったため、喜んでいるフシすらある。
鳴海は子どものころは光子が大好きで「私も伯母さんみたいな大人になりたい」と言っていたが、やっぱり涙1つこぼさない。光子のようにはなりたくないと思うばかり。親戚付き合いが希薄になるばかりの今、光子のような死に様も珍しくないのではないか。