2人が折り合うのか、平行線を辿るのか

リーマン・ショック後に大学に進んだ那須田たちは多くが奨学金に頼った。親の収入が減り、なかなか元に戻らなかったためである。那須田が「どうやって大学に通った」と問うたのは学資の工面方法なのだ。

奨学金の多くは貸与型だから、返済しなくてはならない。となると、奨学金を借りているらしい那須田と鳴海には金銭感覚や生活観に隔たりが生じる。

事実、那須田は深く考えずにマンションを買った鳴海の金銭感覚が理解できない。自分は衣食住が足りたら、それでいいと思っている。そんな2人が折り合うのか、平行線を辿るのか、そこも見どころの1つになる。

視聴者の変化も感じる。今の時代では許されそうにない昭和の言葉や表現を取り入れたTBS『不適切にもほどがある!』(2024年)には放送当初、一定数の批判があった。だが、やはり公然とは言いにくい独身女性観などが出てくるこのドラマへの非難は見当たらない。

このドラマがそういった考え方を推奨していないことが分かるからだろう。また『不適切――』によって、ドラマが最終的に訴えようとすることを視聴者が見極めるようになったからかも知れない。

重たいテーマばかりだが、見ていて気分が滅入らないのは第一に鳴海が愉快であるため。職場で無邪気にアイドルについて論じ、周囲から呆れられたり、ネコ命の一面を持っていたり。いわゆる天然キャラである。

『ひとりでしにたい』場面写真 鳴海
『ひとりでしにたい』/(c)NHK

綾瀬のコメディエンヌのとして才能が存分に発揮されている。

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