あっさり考えをあらためる
「令和になって、もう7年って知ってます? 結婚すれば安心って昭和の発想ですよね」
反論できない鳴海が「でも子どもとか・・・」と漏らすと、トドメを刺された。
「子どもが親の老後の面倒を見るとか、もはや都市伝説ですよ。そもそも出産するのか、子どもが無事育つのか、無事に自立するのかどうかだって、賭けですよね」
鳴海は完全に打ち砕かれた。あっさり考えをあらため、孤独死しないように1人で生き抜くことにした。そのためにはどうすればいいのか。これからの物語でそれが描かれる。
それにしても那須田は単なる同僚であるはずの鳴海をどうしていじめるのか。答えは単純明快。鳴海が好きだからである。まるで小学生の発想だが、そうなのだ。
このドラマは鳴海のような独身女性が自由に生きることを応援するドラマではない。那須田のように年齢の離れた相手に恋をする人を後押しする物語でもない。
家事をなにもしない老後を送る和夫、それに嫌気が差して熟年離婚を目論んでいるらしい雅子にもそれぞれ光を当てる。鳴海が孤独死と直面したことを端緒とし、全世代に対して、どう生きるべきなのかを問い掛けるドラマである。鳴海が知らない光子の晩年の暮らしもこれから明かされるだろう。
若い世代間にもある世代間格差問題も考えさせようとしている。那須田は和夫に終活を促すため、鳴海の実家に訪れた。その際、那須田は鳴海に「どうやって大学に通ったんですか?」と尋ねる。鳴海は怪訝な顔をしながら「えっ、電車」と答えた。
那須田は鳴海が39歳まで危機感をおぼえず、結婚や老後について何も考えなかった理由が分かった気になる。苦労知らずだったのだ。鳴海はリーマン・ショック(2008年)の前に大学を卒業し、就職した。