氷のように冷たい指摘
鳴海が婚活アプリに書き込んだ自己紹介は「年齢:39歳」「職業:学芸員」「趣味:猫とアイドル」。すぐに男性からのアプローチがあると思っていたが、全くマッチングしない。1件だけあったものの、麦坂ドーソンと名乗る外国人実業家からのもので、どう見ても国際ロマンス詐欺だった。
「学芸員という職業の得体が知れないからか」。鳴海はそう考えた。
「趣味がアイドルというのがイタいのか」とも。自分自身に人気がないなんて、あり得ないと思った。
現実を教えたのは佐野勇斗(27)が演じる同僚・那須田優弥である。都庁から出向してきたエリートで、まだ20代だ。
「山口さんのスペックで無料婚活アプリとか登録しても、男こなくないですか。30代の男は20代しかいかないし、40代の男も平気で20代狙いますからね」
氷のように冷たい指摘だった。親しい間柄なら、まだ分かるが、これが初めての会話である。那須田の言葉はまだ続いた。
「そこに40歳手前で飛び込むとか。需要がないどころか、裸で戦場に行くようなものですよね」
鳴海は怒るのも忘れ、ただ茫然とした。ここまで言われたら、そうなるだろう。那須田は質問もしてきた。どうして急に婚活を始めたのかと。
鳴海は「孤独死したくないから」と言うわけにもいかず、「将来の安心のためにしといたほうがいいのかなって・・・」と答えた。これが那須田のさらなる無情な言葉を生む。