生きた土佐弁を
<土佐弁というと坂本龍馬の影響で、「~ぜよ」を思い浮かべる人も多い。西村さんは「~ぜよ」は最小限にして効果的に使い、生きた土佐弁を入れるようにしてきたという>
土佐弁って龍馬をイメージさせる「~ぜよ」の印象が強すぎるんです。荒くて男っぽい言葉だと思われている。いろいろな作品を見て、「本当は違う」と思っていました。『らんまん』をきっかけに日大の教授から、土佐弁の資料を提供いただきましたし、過去の言葉がどうだったか、地元の年配者にも聞きました。普段の会話のリズムを考えると「~ぜよ」の乱打戦なんてありえないです。土佐弁指導者はほかにもいますが、過去の映像作品のイメージで方言指導されてきたのではないかと思いました。
土佐弁は、本当はすごくキャッチーでかわいくて音がきれい。「~しちゅう」とか「~にゃあ」とか「~やき」とかの響きはすごく土佐弁ぽい。僕が関わるなら、ナチュラルな土佐弁にしたかった。『あんぱん』では生きた土佐弁をそのまま入れている。自画自賛になりますが、いいものが提供できたなと思っています。
方言指導を始めた当初は、任された作品に「役者でも参加したい」という思いがありました。でも、その意識は『らんまん』で変わりました。指導で仕事をいただいている人間が「出たい」というのは違う話。出演するにしても、方言指導をやり切らないとダメだと感じました。
方言指導のオファーがあればまたやりたいですが、今後、朝ドラのような大きな仕事が来ることはないと思っています。『らんまん』に続いて『あんぱん』にも関われるなんてラッキーですし、運命を感じています。