AIは音楽の創り手に何をもたらすか

音楽を創る人にとっても、AIはよきパートナーになっていくのではないかと思います。

これまでだったら、自分の考えをまとめて形にするまでに丸一日かかっていたようなところを、自分の作品をよく知っているAIをアシスタントのように使って伴奏させたり、自分と同じようなセンスでAIにメロディを提案させたり、続きを書かせたりすることもできる。

『創作のミライ-「初音ミク」が北海道から生まれたわけ』(著:伊藤博之/中央公論新社)

脳の中に入っているイメージを形にするのは難しいのですけれども、わずらわしい作業を自分の分身にやらせてしまうことによって、自分らしさを残しつつ時間を有効に活用できる。

アイディアを形にするには時間がかかるので、その時間をショートカットすることによって、自分の創作のイメージに近づけていく。そうした有効活用法がありうるのではないかと思います。

現状ではAIに自分の作品が学習されてしまうというリスクへの反発の声もありますし、権利が侵害されるのではないかという声もある。そのあたりはまだ何とも言えないところもあります。

ただ、音楽の可能性を広げるためのツールとしてAIを活用するのは全然アリです。

AIはまだまだ得体の知れないもので、僕は宇宙人のようなものだと思っているんです。

だから、自分のバンドのメンバーに宇宙人を入れてセッションするような感じで、新しいアイディアが出てくるような可能性があるんじゃないか。コード進行を考えてみてください、リズムを考えてくださいとお願いしたら、いままでにない新鮮な発想が出てくるかもしれない。そうやって、クリエイターに寄り添う形でのAIの利用は十分有用だと期待しています。