アーティストに「人となり」が求められる時代に
たとえば、リスナーの好みや、その日、その時間、その状況によって流れるべき曲をちゃんとマーケティングして、最大公約数的ないい感じのトラックをAIが自動生成するようなサービスが出てくるかもしれない。そういうボットのようなサービスがつくった曲が聴かれるようになるというケースも、もしかしたら生まれるかもしれません。
けれど、そういう音楽を支持する人がどれだけいるかはわかりません。
音楽を聴く人は、その音楽そのものも好きだけど、それを創ったアーティストが好きでもあるんじゃないかと思うんですよね。自分が好きなアーティストを応援したい。だから、そのアーティストが創った音楽を聴く。そういう心理は残り続けるんじゃないか。
だから、アーティストには「人となり」のようなものがより求められるようになっていくんじゃないかと思います。自分がいまどういう気持ちでいるのか。どうしてこの曲を創ったのか。そういうことをSNSなどで発信したり、作品と共に自分の思いを語ったりできる。そういうアーティストが増えていくのかもしれません。
※本稿は、『創作のミライ-「初音ミク」が北海道から生まれたわけ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『創作のミライ-「初音ミク」が北海道から生まれたわけ』(著:伊藤博之/中央公論新社)
本書は伊藤氏の歩みをたどりながら、「ツクルを創る」「収穫モデル」「メタクリエイター」等々の経営哲学を紹介。
「ボカロ文化って何?」という読者でも、創作の根源的な意味を考えたり、AI時代を展望したりするヒント満載の一冊。