“太っちょゴブリン”と呼ばれて

――小説の設定はどう発想しましたか?

仲良くさせてもらっているエッセイストの方に、「爪さんの書く作品って、良くも悪くも読む人は爪さんの顔を思い出しながら読んじゃうから、小説を書くなら主人公の年齢をガラッと変えたほうがいい」と言われて、主人公を小学生の男の子にすることにしました。

「父子家庭で、家では元アマチュアレスリング選手の父親に暴力を受けている」という設定は、私の少年時代そのもの。近所に住む、太っちょで風俗が大好きな中年男性“ゴブリン”は、現在の私ですね。地元が保守的で閉鎖的な田舎町だったのもあって、周りに助けを求められるような人がいなかったんです。だから小説では、あの時にいてほしかった、いい加減だけど魅力のある大人を登場させたかった。少年時代の「私」とおじさんになった「私」の丁々発止のやり取りを楽しんでほしいなと思います。

実は私も近所の小学生から「太っちょゴブリン」ってあだ名をつけられていた時期があって(笑)。それがきっかけで40歳から美容に目覚め、今年の3月に美容と健康に関するエッセイ集『午前三時の化粧水』を書いたのですが、それが今回の小説執筆のきっかけにもなったんです。