爪切男さん
『愛がぼろぼろ』を上梓した爪切男さん(撮影:本社・武田裕介)
自身のままならない恋愛経験を綴った私小説『死にたい夜にかぎって』でデビューした爪切男さん。以降、ドラマ化されて話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』や、美容を始めてから結婚までを描いた『午前三時の化粧水』など、エッセイを次々に上梓してきました。『愛がぼろぼろ』は著者初めての「創作小説」。父親の暴力に耐える「僕」が、町の外れに住む変わり者のおじさん、通称“ゴブリン”と出会い、成長していく物語です。(取材・文:書籍編集部 撮影:本社・武田裕介)

 初めて文章を書いたのはガキ大将の依頼

――初めての「創作小説」、笑いあり、涙ありで大変面白く拝読しました。小説はずっと書きたかったのでしょうか?

いつかは創作小説を書きたいと夢見ながらも、一癖も二癖もある恋人たちに、ギャンブル好きのご住職など、自分の身の回りにいる人たちのキャラが濃過ぎるもので(笑)。

普通にエッセイを書いてるつもりが、どうしても小説のようになっちゃう。これはあえて小説を書く意味があるんだろうかと(笑)。文学賞などに応募せず、文学フリマからデビューした野良作家ということもあって、まともな小説が書ける自信もありませんでした。

それならエッセイで、自分のこれまでの人生を皆さんに面白がってもらいたいと思って今まで書いてきました。という具合にいろいろ理由をつけて小説から逃げてきたんです。