小説を書くのは“心のセルフケア”
――小説で素直な気持ちを書けたというのは不思議なご経験ですね。
そうですね。3年前に結婚した妻は、読者に楽しんでもらおうと思って書いていた今までのエッセイを読んで、「あんなに酷いことをしたお父さんのことをいいように描くあなたはあんまり好きじゃない」と、ハッキリと言ってくれます。
これまでお付き合いしてきた方々からは、「つらいことを全部笑い話にしてくれるから救われる」と言われてきたので、真逆の反応に最初は戸惑いました。でも妻のリアクションは、彼女が私のことを本当に愛してくれているからこそなんですよね。
この作品を書いたおかげで、笑いに逃げることなく、自分の過去と真正面から向き合うことができました。ここまで自分の”愛”と向き合ったのは初めての経験ですね。
――今後も創作小説を書いていかれるのでしょうか。
小説の題材にしたい魅力的な人が周りにたくさんいるので、もっともっと書いていきたいです。不思議なもので、自分の身に起きた実際の出来事をエッセイに書くと、「話を盛るな、嘘をつくな」と言われてしまうことがある。「事実は小説より奇なり」とよく言いますけど難しい。
でも、それを逆手にとって、これからは自分の正直な想いを小説に落とし込みたい。素直な気持ちを書くことってすごく心地いいので。美容と健康に目覚めたことで、毎日シートマスクをしたり、眉や爪の手入れをしたりするなかで、今までないがしろにしていた自分を慈しむ気持ちが芽生えました。
小説を書くことも私にとっての、“心のセルフケア”なんです。美容をはじめたおかげで結婚もできましたしね(笑)。そしてこれからは「書くこと」で自分も救われていきたい。新しい挑戦の始まりだと思っています。