書くことのハードルを下げられたら

――本作をどんな人に読んでほしいでしょうか。

難しいですね……。おこがましいですけど私が小説を書く意義って、文章を書くことのハードルを下げることにあるのかなと思っています。

もともと読者の方から、「読みやすい」とか「久しぶりに最後まで本を読めました」という感想をいただくことが多くて。私は美しい文章も書けないし、高尚な表現もできない。

でも、そんな私だからこそ「文学とか小説って難しいんじゃないの」と感じている人の入り口になれる可能性はあると思っているんです。そして「こんなおじさんに書けるなら私にも書けそうだ」とも思ってほしい。絶対書けるから。誰かのきっかけになれる作品をこれからも書いていきたいですね。


愛がぼろぼろ』(著:爪切男/中央公論新社)

僕が住む町の外れに、変わり者の太ったおじさんが住んでいる。
学校では不審者扱いされていて、
僕もふざけて「ゴブリン」なんてあだ名をつけてしまった。
悪いことをしたと思ってる。
だってゴブリンだけなんだ。僕の頭を撫でてくれるのは。
お母さんは家を出て行っちゃったし、
お父さんは毎日僕を殴るから――。

少年と中年のくだらない日常が、心の傷の在処を教えてくれる。
自らの過去を投影して描いた、悲しくも笑顔になれる、
自分だけの愛を探す物語。