今は親父に「怖い」と言われている
――それまでは恨んでいなかったのですか?
もちろん殴られるのは嫌でしたし、殺したいとまで思ったこともありました。でもいい思い出もたくさんありますし、なによりたった一人の肉親である親父に寄り添ってしまう自分もいて。
小さい頃、親父が私と無理心中を図ろうとしたことがあったんです。車で港まで行って、あと少しアクセルを踏めば海に飛び込める位置まで進んでいた。当時はただのドライブだと思っていたけど、大人になってから、あの時死のうとしていたんだろうなと気づいて。
親父は親父なりに追い詰められていたのかもしれないと考えると、恨んでいいのかわからない、というのが正直な気持ちでした。私もひとりぼっちだったけど、それは親父も一緒でしたから。
――お父さまと現在はどのようなご関係なのでしょうか。
つかず離れずというか……変な関係です。あの人はもう70代で仕事も引退しているんですが、突然連絡があったかと思えば「隠居して暇や、余ってるAVあったら送ってくれ」と(笑)。まあ、面白いから送りますよね。で、私から届いた箱を開けてすぐに、「お前はやっぱり俺の息子やと思った」と電話がきました。
てっきり性癖が似てるのかと思ったら、「見やすいようにDVDが五十音に並んでたから。わしでも同じことするわ」って(笑)。血は争えないですね。連絡をとる時は他愛もないやり取りばかりなんですけど、近くに住んでいる親戚からこっそり近況を聞くと、「あんだけ殴って育てたのに、全然わしのことを恨んでないから逆に怖い」と私のことを怖がっているみたいなんです。
どうやら私の作品をこっそり読んでくれているみたいなので、『愛がぼろぼろ』を読んだらようやく、安心してもらえるんじゃないかな。「よかった、ちゃんと恨まれてた」って。(笑)