今度は弟の妻に膵臓がんが判明。入退院を繰り返すことに。
「もう、呪われているとしか思えませんでした。子どもたちがそれぞれ家族に病人を抱えているので、母もわがままは言えないと思ったのでしょう。電話すると、『元気だから大丈夫よ、私のことは放っておいていいから』と言って、心配をかけないように気づかってくれました」
不運はこれで終わらない
弟の妻は1年ももたず旅立った。サチコさんは子どものいない弟の様子が気にはなったが、まだ若いし、独り身になった分、母のことも任せられると安心していたという。サチコさんは、義妹の法事で上京するたびに、北海道まで足を延ばし、母を見舞った。
「さすがに気落ちしていて、『私は長生きしすぎたわねえ。若い人が先に逝くのはつらいわ』と肩を落としていましたね」
しかし不運はこれで終わらない。妻を亡くして独り身となった弟に異変が起きる。心筋梗塞で倒れたのだ。サチコさんの夫はひとまず小康状態で安堵していたが、母に加えて弟の心配もしなくてはならなくなった。
「このところ、母の入所しているホームから母の容態が芳しくないという連絡がちょくちょくきます。誤嚥性の肺炎で入院したこともあって、北海道に飛ぶ回数も増えてきました。帰りに東京で入院している弟のもとに寄って、帰宅して夫の様子をみる日々……」
高齢の母を3人で順番に見守ろうねと約束していた仲良し姉弟だったが、その思惑は無残にも外れた。今は、いずれ来る母の看取りも、急速に弱ってきた弟のサポートも、唯一の肉親であるサチコさんの肩にかかってきたのだ。
「この先、自分が倒れたらどうなるんだろうという不安と、私一人が残ってしまう恐ろしさは感じます。世代間で順番に見送るということが、どんなにありがたいことか痛感しますね」
母と夫と弟、3人のサポートを続けるサチコさんの孤軍奮闘はもうしばらく続きそうだ。