あらゆる気持ちで胸がいっぱいに

一番つらかったのが排泄です。おしっこが出ている感覚もない。おしっこがしたいかどうかも分からない。コントロールができなくなっていたんです。尿道に管を入れて勝手におしっこがたまるようにしてもらったんですけど、なんとも言えない無力感に苛まれました。

もっと恥ずかしかったのは大きい方です。年頃の女性に始末をしてもらう。恥ずかしいし、情けない。そうなると、しようと思っても出ないんです。そこで看護師さんが言ってくださいました。

「少なくとも、私たちは大きい方のお手伝いを日々やっていますから平気です。それでも恥ずかしいのも分かりますし、やりやすいようにおっしゃってくださいね」

人のやさしさ。プロのすごみ。そして、自分の情けなさ。あらゆる気持ちで胸がいっぱいになりました。

インタビューを受ける近藤光史さん
(撮影:中西正男)

そこから退院して、仕事にも戻って、今は朝起きたら自分でおしっこができる。これがうれしい。何万回もやってきたであろう排泄ですけど、そこに喜びを感じています。

首だけ置いておいてという話もそうでしょうし、やっぱりこの仕事を自分はしたいんだ。それを感じた入院でした。

「自分に正直であれ」。この言葉を常に抱いてやってきたんですけど、ありのままの近藤光史をありのままの近藤光史としてしゃべる。特別な何かをやるということではなく、喜怒哀楽をその文字のままに出す。それを噛みしめた時間になったのかもしれません。