体力は落ちても、知恵がついてくる

 オペラが終わったら、次は何をする予定? 声楽家、歌人の顔もあって多才ですが、ふたたび漫画でしょうか。

池田 いいえ、もう体力が持たない。近頃は平らな道を歩いているだけでつまずくんですもの(笑)。とくに漫画は腕の力が必要なんです。同世代の漫画家さんもパソコンで描き始めているけれど、私はほら、いまだにスマホも使えないヒトだから。

 でももったいないでしょう、せっかくの才能が。

池田 最近、中央競馬に「イエデゴロゴロ」という牝馬(ひんば)がいるのを見つけて、「わあ、私の理想はこれよ」と(笑)。熱海の家は、ベランダから糸を垂らしたら魚が釣れそうなくらい海が目の前なの。そこで猫と遊んだり、映画を観たり、海を眺めてゴロゴロしているうちに一日が終わるのが、とても平和で素敵よ。

 うらやましい。私は3年前に大学理事長になってからは、朝に大学に行き、夜は会合という毎日。限られた連載を残して仕事をやりくりしていますが、いずれは小説に専念したいです。

池田 私は『ベルばら』で早く世に出て、いろいろなお仕事をして、林さんとも楽しく遊んで。すごく豊かな人生だったなと最近よく思います。

 体力は落ちてくるけれど、そのぶん知恵がついてくる。70代って、神様から与えられた特別な時間かもしれませんね。

池田 『ベルばら』がいまだに女性たちに支持されるのは、要するに社会が熟しきっていない証拠でもあると思うんです。ただ、今回の映画では「息子から勧められました」という声も聞かれて。いい変化が訪れているんだな、まだ時代を超えて自分の思いを伝えられることもあるんだなと感じているところです。

 そう、イエデゴロゴロもいいけれど(笑)、理代子さんにはもっと活躍してほしい。小説というより、オペラになりそうな人生を今後も期待しています。

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