引っ越しのために荷物を半分に断捨離
マンションを売却し、新しい住まいはUR(独立行政法人都市再生機構)で探しました。シニア世代になると保証人を立てるのが大変だし、貸し渋りの問題を耳にすることも。
URなら保証人、更新料が不要。簡単な審査のみで入居できます。家賃、駅からの距離、間取りなど条件に合った物件が、隅田川沿いの下町にありました。それまで縁のなかったエリアでしたけど、下見に行ったら、ちょうど4月で川沿いに桜が咲いていて、きれい! それで決めました。持ち家を手放す寂しさは、もちろんあったけれど、新しい生活が始まるというワクワク感が私のなかで膨らんでいったように思います。
その前に大きな課題がありました。65平米の2LDK、面積は以前の半分以下ですから、ものを大量に減らす必要があったのです。大きな家具は置き場所がないのでほとんど手放しました。
仕事柄、調理道具や食器類も膨大にあって。整理整頓の本を読むと、結局、使うか使わないかが処分の基準だと書かれていたので、それを念頭に作業を進めました。シニア3人の食事を作るのに多くの道具はいりません。
鍋、お玉、へらなどの道具は大小1個ずつと、好きなものだけ残してあとは料理教室の生徒さんなどに声をかけ、譲れるものは譲り、残りは処分。食器はレストランで使っていたものや、自由が丘で食器店を営んでいた母のコレクションもありましたから、南青山の仕事場でフリーマーケットを開催しました。
こうして思い切りよく手放したのですが、実は「捨てなきゃよかった」とあとから思ったものもたくさんあります。あらたまった席で着られるスーツ、使いやすい小ぶりの中華鍋、すり鉢、茶碗蒸し用の器……。でも、なくても困らないし、「あればよかったなー」というくらいの気持ち。大きな後悔はないですね。
一方で、ずっと長く使ってきたものや愛着のあるものは残しました。幼い頃に祖母からもらったペコちゃんの人形、祖母が使っていた飾り棚、母が何十年と愛用し、ところどころ漆がはげている茶笥。私たちにとってかけがえのないものです。