情報の不足という問題
二つ目の問題は情報の不足だ。木村さんは、どのような支援制度が利用できるのか詳しく知らなかったと振り返った。市役所へ相談に行っても、専門用語が多く、手続きも複雑で理解しづらいという。
「もっとわかりやすく説明してもらえれば助かるのに」
と木村さんは困惑していた。情報が不足しているために、利用可能なサービスを活用できず、結果的に介護者の負担が増している現実がある。例えば、「ケアマネジャー」という言葉を聞いても、それが何をしてくれる人なのかピンとこない高齢者も多い。ケアマネジャーとは、介護サービスを受けるための計画を立て、適切なサービスを調整してくれる専門職である。しかし、その存在を知らなければ、相談することもできない。
さらに、助けを求めることに対する心理的な抵抗も問題である。木村さんは「家族のことは自分で何とかしなければ」と思い込み、誰にも相談できずにいた。しかし、無理がたたって自身も体調を崩し、介護される妻も適切なケアを受けられなくなってしまった。このような状況は、老老介護における大きな落とし穴である。