介護は社会全体で支えるべき課題

そうしたなかで、介護に関する情報提供の充実は欠かせない。高齢者でも理解しやすいように専門用語を避けたパンフレットの作成や説明会を開催することも重要だろう。実際に厚労省は「介護サービス情報の公表制度」を設け、インターネットでサービス内容や料金を確認できる仕組みを導入した。しかし、高齢者がインターネットを利用できない場合も多く、効果のほどは不明だ。

さらに低所得の高齢者に対しては、介護サービスの自己負担額を軽減する制度や、生活費の補助も必要ではないか。自治体によっては、独自の支援制度を設けているところもある。なかには市区町村の福祉課に相談し、介護用品の補助を受けられることになった例もある。

介護者が自分の健康を犠牲にしては、長期的な介護は成り立たない。定期的な健康チェックや、リフレッシュのための時間を確保することも大切だ。レスパイトケア(介護者が一時的に介護から離れ、休息を取るためのサービス)の利用も検討すべきである。レスパイトケアを利用することで、介護者は心身のリフレッシュができ、介護の質も向上するかもしれない。

ただし、介護は家庭内の問題ではなく、社会全体で支えるべき課題だ。介護保険法の第一条の目的にも、そう記されている。職場での介護休暇の取得促進や、地域コミュニティでの支援活動など、さまざまなレベルでの協力が必要であることは言うまでもない。

※本稿は、『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(宝島社)の一部を再編集したものです。

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