(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省が発表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2040年度には約57万人の介護職員が不足するとされ、人手不足が深刻化しています。そんななか、介護問題の取材を行うノンフィクションライター・甚野博則さんは、「介護する側も、される側も『地獄』状態なのが今の日本の介護システム」だと語ります。今回は、甚野さんの著書『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』から一部を抜粋し、ご紹介します。

「精神的苦痛」が介護者を絶望に追いやる

老老介護とは、介護する側、される側がともに65歳以上のケースをいう。

厚労省が2023年に公表した調査では、介護を行っている同居世帯のうち、実に63.5%が老老介護だというのだ。厚労省は同様の調査を2001年から行っているが、老老介護の割合が初めて6割を超えた。今後もその割合は増えていくのだろう。そうした老老介護には、多くの根深い問題が絡み合っている。

例えば介護する側の精神的負担は、今日の日本社会における介護問題の核心の一つだ。とくに、家族介護においては「老老介護」がもたらす精神的な苦痛は、見過ごされがちな重大な問題である。

次に挙げるのは、かつて取材した高齢者夫婦の例だ。