地域のつながりの希薄さなども問題に……
三つ目の問題が、地域のつながりの希薄さだ。かつては隣近所で助け合う文化があったが、高齢化が進むにつれ、周囲の人々も自分たちの生活で精一杯になっていく。とくにそうした傾向は都心部に多い。
「誰にも頼れず、自分たちだけで何とかしなければならない」
孤独を感じたと木村さんは言うが、同じ思いをしているのは彼だけではないだろう。地域の支援が得られないなか、介護の負担を夫婦だけで抱え込むしかない現状を目の当たりにする人は多いはずだ。
精神的なストレスが四つ目の問題だ。木村さんは認知症を患う妻の介護において、突然の怒りや暴言に悩まされていた。「何度も同じことを聞かれ、怒鳴られると心が折れそうになります」と木村さんは語っていた。認知症の症状に対する理解が不十分なまま介護を続けることは、介護者の精神的な負担を大きくしていたのだ。
そして五つ目が、介護者自身の健康問題だ。木村さんは腰痛や高血圧といった自身の持病が悪化しつつあるが、病院に行く時間も取れない。「自分が倒れたら妻はどうなるのか」と不安を抱えながらも、無理を重ねている。介護者が健康を損なえば、介護される側も適切なケアを受けられなくなる。老老介護で最も危険なのが、このような「共倒れ」のリスクがあるということだろう。