介護付き有料老人ホームでは月額30万円は必要

一方、厚労省の資料の中にも施設サービス自己負担の1カ月あたりの目安を示したものがある。こちらは介護施設のなかでも安価な特養に入った場合の目安が記されている。それによると、要介護5の人が特養のユニット型個室を利用した場合は、次のとおりだ。

施設サービス費 約2万8650円(1割分。介護保険を使わないと約28万6500円)
居住費 約6万1980円
食費 約4万3350円
日常生活費 約1万円
合計 約14万3980円

『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(著:甚野博則/宝島社)

こちらも地域などによって居住費や生活費にばらつきがあるため一概にはいえないというのが前提だ。先の生命保険文化センターの調査では施設介護の平均が12.2万円だったが、厚労省の目安額は少し割高となっている。

ただし、これは安いケースだと思っていたほうがよい。なぜなら、特養に入る場合と、介護付き有料老人ホームに入る場合とでは、全く金額が異なるからだ。当たり前だが、どんな介護を受けるかによっても金額は大きく違う。

例えば介護付き有料老人ホームでは、居住費だけで15万円かかる施設は珍しくない。むしろ地域によっては安いほうだ。これに、先ほどの食費約4万3350円、日常生活費約1万円を加えても20万円は超える。実際には、もっと大幅に超えるだろう。

さらに介護保険を使って月に自己負担で3万円のサービスを受けると仮定して、他に電気・水道代、アクティビティーの材料代、予防接種代、理美容代など、こまごまとした費用を入れれば、月に30万円近くになる。都心では、それでも驚くほど高額とは言えない。