仮に夫婦2人が特養に入った場合は赤字

さらに入居時に一時金がかかる施設もある。入居一時金は無料の施設もあれば、高額なケースでは数千万円など幅広い。私が知っている最高額は約5億円という施設もあるくらいだ。入居一時金は、入居期間によって償却されるため、途中で退去すればある程度返金される施設もあるが、それでも入居時には、それなりの金額が手元に必要である。

つまり、どういう介護生活を望んでいるかによって介護にかかる金額は大きく異なるわけだが、少なくともいえるのは、安価な特養に入るにも月15万円くらいかかるのが目安ということだ。総務省統計局のデータによれば、2人以上の世帯のうち1カ月の平均実収入は高齢無職世帯で約20万円である。夫が特養に入って月に15万円を支出したとすると、残された妻の収入は5万円ということになる。

もちろんこれは単純計算に過ぎないが、仮に夫婦2人が特養に入った場合は赤字となってしまうのだ。

こんなケースもある。要介護4の母親を神奈川県の自宅で介護している女性会社員(54歳)はこう話す。

「父が他界し、今は母親と二人暮らしをしています。持ち家ですので家賃はかかりません。母親は要介護4で、週に2回訪問介護を受けています。また、入浴するのが目的でデイサービスにも週に2、3回通っています。これだけで数万円の介護費用がかかっており、介護用ベッドと歩行器のレンタル、紙おむつ代、これに食費や宅配の弁当、光熱費なども入れれば、ざっと15万円くらいだと思います。掃除や洗濯など身の回りの世話は、私が休みの日にしていますが、もし年金しか収入のない母親が賃貸住宅で一人暮らしをしていたら、介護サービスを受けながら自宅で生活していくのは無理だと思います」