オモチャもお年玉も縁がなかった
私と弟は図書館で借りた絵本を読んだり、チラシの裏に絵を描いたりして過ごした。
「エホバ」のせいでクリスマスもお誕生日もお正月もなかったが、どのみち貧乏なのでオモチャもお年玉も完璧に縁がなかった。エホバという神だか父だかは、私たちを徹底的に踏みつけて試してでもいるのだろうか。
スーパーへ買い物についていくと、レジ付近に陳列されている「にんぎょひめ」や「3びきのこぶた」などの絵本をたまに買ってもらえた。本当はアヤちゃんやチーちゃんが持っていた「リカちゃん」や「ジェニーちゃん」が欲しかったけれど買ってもらえなかったので「にんぎょひめ」を見て描いた自分の絵を切り取って、ペラペラの着せ替え人形を作って遊んだ。
本物のリカちゃんを持っている彼女たちが羨ましかった。なんてったってリカちゃんは長い髪をいろんな髪型に結んで遊べるのだ。ポニーテール、お団子、三つ編み、それを解いてウェーブを作ったりもできる。
でも羨ましい気持ちを悟られたくなかったので「お人形なんて興味ない。秘密基地で本読んでるほうが楽しい」と嘘をついた。
しばらくしてそのリカちゃんたちが丸坊主になっていた時には本当に驚いた。髪がないリカちゃんなんて価値がほとんど失われたも同然だ。
彼女たちが人形を買ってもらえること、数日で一番大事な髪を禿げさせたこと、それを気にもせずすぐに次のオモチャで遊んでいることに腹が立った。
小学校に上がる頃には、ご飯にお味噌汁をかけた「ねこまんま」が続くほどの極貧家庭になっていた。